債務整理にはいくつかの種類があります。
任意整理とは、その中でも最も利用者の多い債務整理方法です。
それでも任意整理がどのような方法で行われる債務整理なのかは、あまり認知されていません。
任意整理とは、どのような債務整理方法なのでしょうか。
また上手に活用するにはどうすればいいのか、ご紹介します。
任意整理はどんな債務整理方法?
任意整理とは…。
返済不可能になった借金に対し、話し合いによって返済可能な条件に変更する債務整理です。
実際には債務者の代理人である弁護士や司法書士が、債権者と話し合いを行います。
ポイントは話し合いによって解決するということにあります。
ここまでの説明ではまだ少し分かりにくいかと思います。
ここからさらに詳しく、任意整理について解説します。
弁護士や司法書士が債権者と交渉する
債務者と債権者と話し合い、現実的な借金の返済方法をさぐるのが任意整理です。
でも実際には、債務者は立場が弱いことが多いですよね。
当然、「返済を軽くして欲しい」とお願いしても聞き入れてもらえません。
そこで法律に詳しい弁護士や司法書士が債務者の代理人として、債権者と交渉を行います。
依頼者は交渉が終わるまで、待つだけで債務整理が完了します。
裁判所は関わらない
自己破産などの債務整理は、裁判所での手続きを行わなくてはいけません。
ところが、任意整理はあくまでも当事者同士の話し合いです。
お金を貸した人と、お金を借りた人が話し合って返済方法を決めます。
当然、裁判所が出てくる必要はないわけです。
裁判所からの書類なども送られてきません。
家族にバレることなく債務整理しやすいという特徴もあります。
借金を現実的に返済可能な状態にする
任意整理の場合は、借りたお金の元金だけは返済します。
これまでの返済について、違法な金利であった場合、金利の引き直し計算を行います。
そして残った返済額を3〜5年の時間をかけて返済していくことになります。
この残った返済額に対しては、利息がカットされるため返済総額を減らすことができます。
過払い金がある場合には、借金が大幅にカットされることがあります。
ただし、過払い金の多くがすでに時効を迎えているため、借金が減るケースは年々減っています。
任意整理する対象を選ぶことができる
自己破産をする場合は、無条件ですべての債権者が対象になります。
しかし、任意整理の場合は、債務整理の対象とする債権者を選ぶことができます。
このため、A社は任意整理するけど、B社は任意整理しないというようなことが可能です。
例えば車のローンが残っている場合には、そこだけ債務整理しない、ということもできますね。
任意整理手続きの流れ
任意整理は一般的に司法書士や弁護士に相談することから始まります。
ここでは任意整理のために弁護士事務所などを訪問してから、返済開始までの流れについて紹介します。
任意整理の大まかな流れは下記のようになります。
1 | 弁護士事務所や司法書士事務所で相談 |
2 | 任意整理の依頼 |
3 | 弁護士や司法書士から債権者へ受託通知を送付 |
4 | 過払い金の有無などの調査 |
5 | 返済プランの検討 |
6 | 債権者との和解交渉 |
7 | 債権者との和解合意 |
8 | 返済開始 |
任意整理の依頼は弁護士でも司法書士でも受けることができます。
しかし司法書士は1件の債権額が140万円を超える場合には、任意整理の手続をすることができません。
借金のうち1件でも140万円を超えるものがある場合は、弁護士事務所で相談を行いましょう。
任意整理の依頼を行うと、弁護士や司法書士から債権者に受託通知が送られます。
この時点から和解交渉が終わるまで、返済の取り立てがなくなります。
その後、弁護士や司法書士が借金の状態を確認します。
最適な返済プランを練って、債権者それぞれと交渉していきます。
任意整理対象の債権者が5社ある場合は、5社それぞれと交渉を行います。
交渉により和解合意ができたら、そこから返済が始まります。
任意整理はいくら費用がかかる?
弁護士や司法書士に依頼をするわけですから、もちろん報酬が発生します。
この報酬体系が少し複雑で、一般的には「相談料+着手金+報酬金」で計算されます。
それぞれの費用と支払い方法について解説します。
相談料
通常は弁護士には相談するだけでお金がかかります。
ただし、借金問題の場合、多くの事務所で無料相談が可能です。
この場合はもちろん費用は発生しません。
着手金
任意整理に成功してもしなくても払うお金です。
依頼に対して弁護士や司法書士が実際に動くことに対する費用です。
1社あたり3〜4万円に設定されています。
報酬金
任意整理が成功すると支払うことになる費用で、1社あたり2万円以下という取り決めがあります。
この報酬金を着手金に含めている弁護士事務所もあります。
この場合報酬金は発生しませんが、着手金が相場よりも高くなります。
任意整理費用の支払い方法
任意整理の費用は、前払いで着手金の支払いを行います。
そして和解が成立した時点で、報酬金を支払うことになります。
ただ、借入件数が多い場合は、一括払いが難しいケースもあります。
そのような場合は、後払いや分割払いを認めてくれる弁護士事務所もあります。
弁護士事務所が受託通知を出した時点で、借金の支払いそのものが止まります。
実際にはそこで浮いた金額を着手金に充てるというケースが一般的です。
任意整理のメリット・デメリット
任意整理がどのような債務整理方法なのかをご紹介してきました。
それでは次に、任意整理のメリットとデメリットを見ていきましょう。
任意整理のメリット
- 手続きに入ると債権者の取り立てが止まる
- 過払いがある場合は返済残高が減る
- 現実的に返済可能な状態にすることができる
- 特定の債権者だけを整理することが可能
任意整理の手続きに入ると、弁護士や司法書士から受託通知が債権者に送られます。
その時点から債権者の取立てが止まります。
一時的とはいえ、借金に追われる状態から抜け出すことができるのはありがたいですね。
また、過払い金がある場合は返済残高が減ります。
過払い金がなくても、現実的に返済可能な返済計画を立ててもらえます。
このため、安定した収入さえあれば返済が可能になります。
なおかつ、どうしても返しておきたい借金だけ債務整理をしないということも可能です。
このように、任意整理は自由度が高く、なおかつメリットの大きな債務整理方法のひとつです。
任意整理のデメリット
- 借金そのものが大きく減るわけではない
- 5年間新規の借り入れや、クレジットカードを作れなくなる
- 確実に任意整理できるとは限らない
デメリットとしては、高額な借金の場合、長期間返済に追われ続けることになります。
あくまでも借金を「減らす」手続きですから、ゼロになるわけではないのです。
また、どのような債務整理を行ったとしても、ブラックリスト入りします。
5年間は新規の借り入れや、クレジットカードを作ることができなくなるという不便さもあります。
最大のデメリットは、任意整理を受け入れてくれない金融機関が増えているということです。
この場合は、その金融機関の任意整理を諦めるか、他の債務整理方法に切り替えることになります。
任意整理はこんな人におすすめ
債務整理にはいくつかの方法があります。
任意整理に向いているというのはどのような人なのでしょう?
任意整理が適している人について解説します。
- 特定の債権者の借金を債務整理したくない人
- 自己破産や個人再生ができなかった人
- 債務整理を家族に知られたくない人
- 安定した収入がある人
- 借りたお金を返したい人
特定の債権者の借金だけを債務整理したい人
任意整理の特徴でも説明しましたが、任意整理は債務整理の対象を選ぶことができます。
このため、持ち家を守るために、住宅ローンの返済は債務整理から外すというようなことができます。
お世話になっている金融機関の借金だけを債務整理から外すことも可能です。
自己破産や個人再生ができなかった人
自己破産や個人再生は、裁判所の判断によって認められないケースがあります。
自己破産や個人再生という方法で債務整理ができない場合は、当事者同士の話し合いである任意整理での債務整理を目指します。
債務整理を家族に知られたくない人
任意整理であれば絶対に家族にバレないというわけではありません。
しかし、自己破産や個人再生よりはその可能性が下がります。
任意整理での手続きは、基本的にはすべて弁護士に任せることになります。
弁護士に「家族に秘密で」と伝えておけば、きちんと対応してもらえます。
安定した収入がある人
任意整理は和解合意した後に毎月返済を行います。
このため、収入が不安定な人は任意整理をしても返済が厳しくなることがあります。
個人事業主でもある程度の収入が見込める人でないと、任意整理をしても返しきれないということがあります。
借りたお金を返したい人
借りたお金だから元金だけでも返したい。
そういう思いを持っている人は任意整理が向いています。
債務整理をすることには代わりありませんが、借りた金融機関にかける迷惑を最小限に抑えたい。
そのような人は任意整理が向いています。
まとめ 債権者に現実的に払える額に交渉する方法
債務整理というと自己破産を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、実際に利用者が多いのは任意整理です。
債権者と債務者もしくは、債務者の代理人が話し合って返済方法を決めていきます。
なので、少なくとも借りたお金の元金だけは返していきます。
また、和解合意以降は金利が発生しないこともあります。
これにより月々の返済額が楽になり、安定した収入のある人には最適です。
また特定の債権者だけを債務整理の対象外にすることもできます。
お世話になっている金融機関だけを債務整理しない、というようなことも可能です。
このように、比較的自由度の高い債務整理方法です。
借金の返済に困ったときは、まずは任意整理ができないか、弁護士に相談してみましょう。