自営業(個人事業主)は会社員のように安定した収入があるわけではありません。
収入が多いときもあれば、ほとんど収入ゼロになるようなこともあります。
時には事業資金も生活費も苦しくなり、借金をしてしまうことがあります。
もちろん借金をしても根本的な解決にはならないため、苦しさは改善されません。
そのような状況で自営業者が借金を返済していくには、どのようにすればいいのでしょうか。
ここでは収入が不安定な自営業者が借金を返済する方法を紹介します。

自営業者が事業資金と生活費の両面で苦しくなる大きな理由のひとつが、両方の財布をひとつにしているためです。
事業資金と生活費を明確に分けて、どちらに問題があるかわかりやすくしましょう。
事業資金での借金は必要なものです。
まずは生活費の借金だけを完済させましょう。
事業がいい方向に向いていなくて経営が難しい場合は、廃業と自己破産を検討してください。
ゼロからやり直すことも視野に入れておきましょう。
事業資金と生活費を分けて考える
自営業(個人事業主)の場合は、事業資金と生活費が一緒になっていることがよくあります。
これらは本当はそれぞれ、別の財布にする必要があります。
ですが、ほとんどの人が帳簿上で帳尻合わせをしているだけ…。
実際には同じ財布でやりくりしているのではないでしょうか。
まずはそれぞれの財布をきちんと分けて、どちらがにいくらのお金が必要なのかを明確にすることから始めましょう。
生活用と事業用の財布を分けて考えること
その上で事業資金は事業用ローンから借り、生活費はカードローンのような一般的なローンから借りましょう。
両者をひとつにしないようにしてください。
これらを一緒にしてしまうから、片方が苦しくなると事業資金と生活費の両方が苦しくなってしまいます。
事業資金での借金はある程度仕方のないものですが、生活費の借金は出来る限りの改善しておきたいところです。
両方を分けて考えるにはきちんと帳簿をつけることです。
帳簿は何も、年末の確定申告のためにつけるのではなく、事業の収支バランスを確認するためにつけるものです。
自分にいくらの借金があり、これからどう返済していかなくてはいけないか、帳簿をつけながら確認するようにしましょう。
生活費の借金だけを完済する
取引先からの集金が遅れても、支払いは遅らせられないということは度々あります。
事業資金の借金はある程度までは許容範囲と考えて、まずは生活費の借金を返すことだけに集中しましょう。
すでに事業資金と生活費が一緒になっている場合も、強引にでも金融機関ごとの線引きを行いましょう。
そのなかで、生活費として借りている借金から優先的に返済してきましょう。
もちろん生活費の見直しも必要です。
自営業をしていると、付き合いでお酒の場にも顔を出さなくてはいけないかもしれません。
義理は大切にする必要がありますが、必要以上にお金のかかる遊びには付き合わないようにしましょう。
事業資金と生活費を同じ財布にしているから、収入以上の暮らしをしてしまいます。
まずそこを改めて、生活をコンパクトにすることから始めましょう。
その上で繰り上げ返済などを活用して、生活費の借金ゼロを目指してください。
自営業者でも債務整理を検討する
もし事業資金と生活費の両方が苦しい原因が、事業の経営状態の悪化にある場合…。
どんな工夫をしても収入が減っていますので、借金の返済は難しいかと思います。
こういうときに自転車操業になってまた借金を増やしてしまいがちですが、ここは冷静になって考える必要があります。
- 事業が今後プラス方向に改善する可能性があるのか
- 安定した収入を期待できるのか
運に左右されるのではなく、将来的に上記の2点が確約できないのであれば、廃業をして新しい道を選ぶ必要があります。
事業がいい方向に向かないのであれば、自己破産をしてゼロからやり直すということも考えなくてはいけません。
浪費をしているわけでもないのに、事業資金も生活費も苦しいというのはすでにそういう状態まで追い込まれているということを認識しましょう。
追い込まれた結果、闇金などに手を出す人もいますが、言うまでもなく闇金からの融資で改善した人はほとんどいません。
冷静に自分の事業を見直して、盛り返す未来が見えない場合は、弁護士に相談して自己破産も含めた債務整理の検討をしてください。
債務整理をしても事業を継続できるケースもありますので、それらも含めて相談することから始めてください。
自営業者が債務整理をする場合の注意点
それでは、自営業者が債務整理を行う上での注意点を簡単に見ていきましょう。
同時廃止か管財事件か、自己破産の注意点
まずは自営業者の自己破産における注意点を確認していきます。
自己破産には大きく分けて、「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類があります。
同時廃止 | 管財事件 | |
20万円以上の財産が… | ない | ある |
破産手続きが… | 少ない | 煩雑かつ多い |
費用が… | 少額で済む | 高額になる場合が多い |
免責決定までが… | 短い | 長い |
両者の特長を一番簡単にまとめるとこのようになります。
個人で自己破産を行う場合や、時価20万円以上の財産がない場合には「同時廃止」になります。
反対に、換価可能な在庫や事務所を抱えた自営業者が自己破産手続きを行うと「管財事件」となります。
これらの財産は裁判所に専任された破産管財人によって売却され、換価されたのち、返済に充てられることになります。
両者のもっとも大きな違いは「費用」です。
同時廃止は少額ですが、管財事件には20万円以上の費用がかかることがほとんどです。
これは裁判所に収めるお金や、破産管財人の選定などが関わってくるためです。
また自営業の場合、「収入があるのに借金だけゼロ」という状態になるため、自己破産が認められないケースもあります。
銀行の信用情報機関にも10年以上記録が残りますので、事業資金の確保が困難になるデメリットもあります。
借金が最大1/5免除。個人再生の注意点
自己破産が認められないようなケースの場合、個人再生という手続きを行います。
これは借金返済計画を立て、現在の債務を最大1/5まで減額したうえで、以後5年間までに完済を目指す手続きです。
事業と並行して借金返済を行いたい、財産を手放したくない方はこの手続を選択します。
ただ、これは個人再生に限ったことではありませんが、債権者すべてに連絡が行くことになります。
このため、場合によっては取引先に債務整理をすることが知られてしまう場合があります。
一度失った信頼を回復するのは難しく、特にお金の問題となると、その後の取引はシビアになる傾向にあります。
このため、同じ地域での事業を諦めるか、廃業に追い込まれる自営業者も少なくありません。
債務整理を行う時には慎重に、弁護士と相談しながら最善の方法を取っていきましょう。
まとめ 借金が返せないのは事業が悪いのか生活が悪いのか見極める
自営業者で事業資金と生活費の両方が苦しい最大の原因は、それぞれの資金をひとつの財布として管理しているからです。
きちんと帳簿をつけて、事業資金と生活費を分けて考えるようにしましょう。
借金もどちらのための借り入れかを明確にして、まずは生活費の借金ゼロを目指しましょう。
生活費の借金ゼロのためには、浪費を解消しなくてはいけません。
すでに倹約して無駄のない生活をしているのに事業資金も生活費も苦しいという状態は、事業の継続そのものを検討するタイミングでもあります。
債務整理や事業の継続の可否も含めて弁護士に相談してみましょう。