事業所運営の経費、仕入れのための費用、消費税をはじめとする税金や保険料。
働く従業員への給与と、自営業・個人事業主のお金に関する悩みは尽きませんね。
特に銀行などから融資を受けている場合にはその返済に首が回らない。
さらに他の金融機関からお金を借りているせいで自転車操業…。
借金は減らないままだけど、営業を続ける以外ない。
経営破綻寸前のラインでなんとか会社を回している、というとき、まずどうにかしたいのはやっぱり借金ですよね。
特に自営業者は多重債務に陥りやすいです。
その原因の大半が経営不振であるために、先の見通しや収入がわからない、という問題に直面することになります。
こうした自営業・個人事業主が多重債務に陥ってしまったとき、どのような解決策が考えられるのでしょうか。

事業が好転せず、業績が伸び悩み、うまくいかないまま借金だけが増えていく。
そんな自転車操業の最たる原因は、あなたの気持ちの焦りかもしれません。
「絶対にこの期日までにこの額を用意しなければならない」という思い込みこそが、他の金融業者からお金を借りてでも返済に間に合わせている、というケースがあります。
しかし早期段階で自転車操業から脱しなければ、破産時に大規模な損害を生み出し、社会的信用を失うことに繋がる恐れもあります。
自営業の方でも債務整理を行うことは可能ですが、多くの場合事業を廃止する必要がありますので、慎重に選択してください。
自転車操業の原因と実例、解決策は?
個人で会社を持っていたり、自営業を営んでいる方が借金をすることはそう珍しいことではありません。
会社の経営のため、仕入れのため、従業員の給与を支払うため、もしくは自分の生活費のため…。
借金理由はどうであれ、数千万単位でお金を借り入れているという会社は少なくありません。
それが短期間のことであったり、業績が軌道に乗り始めれば自転車操業に陥ることはありません。
しかし会社によってその借金を返済していけるかどうか、というのは千差万別です。
「てるみくらぶ」に見る倒産規模の拡大の恐ろしさ
2017年3月、「旅行会社てるみくらぶ」が破産を申し立てた事件は記憶に新しいものです。
負債総額は151億円となっており、そのうち100億円は一般顧客の債務となっています。
2017年2月末の段階ですでに支払いが滞り、メインバンクからの緊急融資を受けるなどしていました。
しかし結果として125億円もの債務超過となり、経営破綻に致りました。
このてるみくらぶの倒産について、内部の資金繰りがギリギリの状態だったと知っていたのは、ごく一部だったそうです。
そのため末端まで情報が行き渡らず、破産申告をする数日前まで、同社は新聞記事に広告を出していました。
決算書の粉飾なども明らかになっていくなか、資金繰りがうまくいっていないこともわかりました。
さらに安いツアー商品などで顧客を集めて、その資金を次の旅行手配に充てていたこともわかりました。
さらに弁済率はわずか1%程度となっているとのこと。
またSNS上で実際に海外旅行に行っていた方々が状況や詳細を伝えていたのも印象的です。
これにより「計画的破産だったのではないか」など更なる批判を浴びることにもなりました。
自転車操業によって倒産時の被害規模が拡大してしまう恐ろしい具体例となりました。
参考:http://toyokeizai.net/articles/-/167138
自転車操業のさらなる原因は「真面目さ」にある?
このページを見ているあなたも、自転車操業になって借金を返済できない状況にある方のひとりでしょう。
商売がうまく回らず、来月も会社を回すためにお金を借りなければならない。
でも、返済もしなくてはいけない…。
そんな不安に苛まれているのではないでしょうか。
自転車操業の原因として、「絶対に返済期日に遅れてはいけない」というある種の真面目さが挙げられます。
絶対にこの日までにこれだけの金額の用意をしなければならない。
そんな気持ちの焦りが、他社からの借り入れに繋がります。
その結果として、自力では到底返済ができないような借金額になってしまうのです。
金融業者に連絡すれば、ある程度期日を伸ばしてもらったり、利息のみ支払う、ということは十分可能です。
ですがそればかりでは当然、借金は減りません。
目先の資金だけを追い求めていては、問題の根本的な解決には行き着きません。
では、こうした自転車操業から脱するためにできる解決策には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
自転車操業からの脱出|根本的な解決策とは
それでは、自転車操業で借金が返せない場合の具体的な解決策についてご紹介していきましょう。
- 政府系金融機関などより低利な金融機関への借り換え
- ファクタリングで売掛金を買い取ってもらう
- 自営業向けのおまとめローンを利用する
- 自営業でも債務整理はできる、ただし慎重に
政府系金融機関などより低利な金融機関への借り換え
まずは日本政策金融公庫など、事業主向けの金融機関への借り換えを検討しましょう。
商工会議所の会員の場合だと、会議所の口添えがあり、審査に通りやすくなります。
ただ、非会員でも融資は申し込めます。
業績が悪化した事業主向けの金融商品もあります。
そのため、民間のビジネスローンよりは借りやすくなっています。
ただし、準備書類や審査に時間がかかるため、一分一秒を争うような借入には不向きです。
ファクタリングで売掛金を買い取ってもらう
安定した取引があるなら、売掛金の買取業者に債権を買い取ってもらうということも可能です。
将来的にある入金が目減りするというデメリットはありますが、銀行融資などに比べて審査も早いです。
ネット上で資金調達可能かどうか回答してくれる会社もあるので、急ぎの需要にも対応してくれます。
自営業向けのおまとめローンを利用する
赤字経営が続き、借金を生活費に充ててしまっているような場合には、自営業者向けのおまとめローンの利用を検討しましょう。
一般的におまとめローンは毎月の収入が不安定な自営業者に厳しく、審査も通りにくいと言われています。
しかし「自営業者向けおまとめローン」「個人事業主専用カードローン」などが用意されている金融機関もあります。
複数の消費者金融などから借りている場合、銀行系のおまとめローンで借り換えることで金利が安くなるケースも少なくありません。
多重債務の状態に陥っている場合には、借入状況をしっかり把握、整理したうえで申し込むようにしてください。
自営業でも債務整理はできる、ただし慎重に
毎月の返済が滞り、自分では到底どうしようもない負債を抱え、多重債務に陥っている…。
そんな時には弁護士などに相談の上、債務整理の手続きを検討しましょう。
自営業の方でも債務整理を行うことはできます。
ただし、債務整理をすれば同時に個人信用情報に異動情報として記録が残ってしまいます。
これにより、その後5~10年間は融資をしてもらえなくなります。
これは事業の停止、ひいては倒産に繋がることです。
今後の売上などを踏まえたうえで慎重に決断するようにしましょう。
個人再生と自己破産のススメ
また債務整理には自己破産・個人再生・特定調停・任意整理などがあります。
主に利用されるのは自己破産と個人再生(小規模個人再生)です。
将来的に安定した売り上げ、収入が見込める場合には個人再生で借金額を減らしましょう。
その後3年間で残債を返済していく計画を考えることが望ましいです。
さらん、この方法であれば会社を残すこともできるかもしれません。
しかし、操業を続けることにより取引先の倒産、さらなる経営悪化も考えられます。
このように借金が膨らむ可能性がある場合には、傷が広がらないうちに自己破産の手続きを取ったほうが賢明だと言えます。
管財事件になることがほとんど
事業者が債務整理をするときには、店舗や売掛金や在庫などの財産が残っているため、「管財事件」として扱われる場合がほとんどです。
管財事件になる場合、申立するにあたり予納金として50~70万円以上を納めることになります。
この予納金を納めない限り、自己破産を申し立てることはできません。
また売上の記録などに不正があれば、免責が不許可となる場合もあります。
同じ事業を立ち上げることもできますが…
こうして自己破産をしたからといって、何もかもすべて終わり…というわけではありません。
確かに自己破産をした段階でその会社は消滅してしまうことになります。
ですが、後に同じ事業を起こしてはいけない、というルールはないのです。
しかし、自己破産の場合その後10年間ほどは新規で借入をしたり、融資を受けることができません。
また手持ちの財産をすべて処分する必要もありますし、取引先の信用もゼロになります。
同じ業界でまた新たに事業をスタートするとなれば、関係づくりや何もかもが完全にゼロからになってしまうでしょう。
それでも倒産に際して大損害を生まないうちに、早い段階で決断を下すのが望ましいと言えます。
まとめ:自転車操業は早いうちに脱しよう。ただし債務整理には慎重に
このページでお伝えした自転車操業からの脱出の方法はあくまでもごく一部のものです。
大前提として、自転車操業から抜け出す方法はキャッシュフローの見直しにあります。
固定費の圧縮や資金調達先の変更をはじめ、自己破産となり事業が倒産にならないためのあらゆる手段を講じる必要があります。
だからといって苦しい状況のまま操業を続けてしまえば、倒産時に大規模な損害を生み出し、社会的信用を大きく損なう恐れもあります。
「現在の状況が自転車操業であるかどうか」を把握したうえで、早期段階での決断を行うのが重要と言えるでしょう。