自己破産をすると自動車や持ち家を手放さなくてはいけません。
それらの資産を失いたくない。
そういう人のための債務整理方法が個人再生です。
同じように資産を失わない債務整理方法に、任意整理があります。
では、個人再生と任意整理はどこが違うのでしょう?
ここではそんな個人再生について、その基礎知識や利用するための流れをご紹介。
さらにメリットやデメリットについてまとめました。
個人再生はどんな債務整理方法?
個人再生をしても、自己破産のように資産も借金もゼロになるわけではありません。
ただ、任意整理と比べ、大幅に借金を減らすことができる債務整理方法です。
さらに任意整理のように、資産を失わないようにすることができる債務整理方法です。
では個人再生を利用すると、借金がどれくらい減るのでしょうか。
どのような手続きが必要なのかについて、もう少し詳しく解説します。
個人再生は裁判所で認可してもらう
個人再生は、自己破産と同じように裁判所で認可してもらう債務整理です。
自分で申請をすることもできますが、手続きがとても煩雑です。
一般的には弁護士に代理人になってもらい、書類の作成や裁判所とのやりとりをします。
個人再生は住宅や自動車を手放さなくていい
個人再生は住宅や自動車などの資産を手放す必要がありません。
そのため持ち家があり、そこで暮らし続けたい人にとっては、とても有効な債務整理方法です。
ただし、住宅はローンの支払中でもよいのですが、自動車はローンの支払中の場合は手放すことになります。
資産を没収されることはありません。
しかし、残したい資産があれば資産額分の借金は返済し続けなくてはいけません。
例えば、資産が150万円、借金が400万円あったとします。
個人再生で、借金は100万円まで減らすことができます。
100万円まで減額すると100万円分の資産は守ることができます。
しかし、残りの50万円分の資産は手放さなくてはいけません。
個人再生では借金が大幅に減る
個人再生では借金の額によって、返済しなくてはいけない最低弁済額が変わります。
借金額 | 最低弁済額 |
100万円未満 | 全額弁済 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1500万円未満 | 債務額の1/5 |
1500万円以上3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上5000万円以下 | 債務額の1/10 |
100万円未満の場合は全額返済しなくてはいけませんので、個人再生のメリットはありません。
また5000万円を超える借金は個人再生することができません。
減額された借金は、3〜5年の期間で返済します。
借金の理由が問われない
自己破産の場合、ギャンブルや浪費などに利用した借金を債務整理することができません。
これは自己破産における「免責不許可事由」に該当するためです。
個人再生の場合は、借金の理由を問われることはありません。
借金の理由がパチンコや競馬のようなギャンブルだった場合は、自己破産ではなく個人再生を選びます。
個人再生手続きの流れ
個人再生は自分で申請をすることもできますが、やはり手続きが煩雑です。
ここでは弁護士に依頼して個人再生の手続をするときの流れについて説明します。
1 | 弁護士事務所で相談 |
2 | 個人再生の依頼 |
3 | 弁護士から債権者へ受託通知を送付 |
4 | 収入・家計・資産の調査 |
5 | 弁護士による個人再生に必要な生類の作成 |
6 | 裁判所への個人再生申し立て |
7 | 個人再生委員との打ち合わせ |
8 | 再生計画案の提出 |
9 | 再生計画認可 |
10 | 返済開始 |
申し立てから認可まではおおよそ4〜6ヶ月かかります。
まずは弁護士事務所に相談をして、個人再生の委任契約を結びます。
契約を結ぶと、弁護士は債権者に対して受託通知を送ります。
この時点で借金の取り立てが止まります。
次に債務者の収入や家計、そして資産の調査を行い、再生計画を作成します。
同時に裁判所への個人再生のための書類作成も行い、裁判所への個人再生申し立てを行います。
その後、裁判所の個人再生委員と債務者、そして弁護士の三者で打ち合わせします。
減額された借金を、どのようなスケジュールで返済していくかについての再生計画案を、裁判所に提出します。
再生計画案に対し、債権者の過半数が反対しない限り認可となり、その後の返済が始まります。
個人再生はいくら費用がかかる?
個人再生にかかる費用は、弁護士費用と裁判所費用の2種類があります。
それぞれへの支払いが必要ですので、いくらずつくらいの費用がかかるのかを見ていきましょう。
弁護士に支払う費用
個人再生を弁護士に委任する場合は。一般的に40万〜60万円の弁護士費用が発生します。
住宅ローン特則と呼ばれる、ローン支払い中の持ち家を守る制度を利用する場合は、さらに10万円程度弁護士費用が上がることもあります。
司法書士に依頼すると30万円前後の費用に抑えられます。
ただし司法書士は債務者の代理人にはなれませんので、債務者が行うべき作業が多くなります。
個人再生について不安がある場合には、弁護士に依頼するのが得策でしょう。
裁判所に支払う予納金
個人再生を行う場合には、申し立て費用として約2万5千円が必要です。
これらの費用に加えて、個人再生委員が専任される場合は15〜25万円の報酬費用を支払います。
東京都の場合、いかなる場合でも個人再生委員が選定されます。
弁護士が代理人になっている場合は15万円、本人が申し立てを行う場合は25万円の費用が必要です。
東京以外の裁判所で再生委員が選定されない場合は、もちろんそれらの金額を支払う必要はありません。
個人再生のメリット・デメリット
それでは個人再生をするときの、メリットとデメリットについて見ていきましょう。
個人再生のメリット
- 借金を大幅に減らすことができる
- 住宅などの資産を残すことができる
- 借金の理由を問われない
個人再生の大きなメリットは、借金が大幅に減ることです。
100万円以上の借金がある場合、最低でも100万円の返済は残ります。
ですが、基本的には借金額の1/5まで減らすことができます。
任意再生の場合は、元金は返済していくことになりますので、返済額の差は歴然としています。
また自己破産と違い、住宅などの資産を守ることができます。
守った資産額と同額の返済はもちろん必要です。
それでも持ち家や自動車を回収されると困るという人にとっては、非常に有効な債務整理方法のひとつです。
また自己破産は、ギャンブルや浪費の借金を債務整理することができません。
個人再生では、何に使った借金なのかを問われることはありません。
借金の理由によって自己破産できなかった人の受け皿としても、個人再生は有効です。
個人再生のデメリット
- ブラックリスト入りして5〜10年間は融資を受けられなくなる
- 返済をするための安定した収入が必要
- 官報に氏名と住所が掲載される
- すべての債権者が対象となる
- 100万円以下5000万円を超える個人再生ができない
個人再生に限ったことではありませんが、債務整理を行うとブラックリスト入りします。
5〜10年は新規の融資を受けられなくなり、クレジットカードも作れません。
このため個人信用情報の履歴が消えるまでは、生活が不便になることもあります。
また自己破産と違って100万円以上の返済が残りますので、安定した収入が求められます。
無職の場合などは、返済ができないと判断されて個人再生が認められない可能性があります。
官報に掲載されることや、すべての債務整理が対象になることはそれほど大きなデメリットではありません。
ただし親しくしている金融機関なども、債務整理の対象になってしまいます。
そのため、個人再生前にはきちんと説明をしておく必要があります。
そして借金額が100万円以下の場合は借金の減額はされません。
また借金総額が5000万円を超える場合は個人再生の適用外です。
これらの借金には実質使用できませんので注意が必要です。
個人再生はこんな人におすすめ
ここまで個人再生ついて説明してきましたが、それではどんな人に個人再生が向いているのでしょう。
ここでは個人再生に向いている人について紹介します。
- 持ち家などの手放したくない資産がある
- 安定した収入がある
- 借金の理由がギャンブルや浪費の人
- 借金が200万円以上ある人
持ち家などの手放したくない資産がある
個人再生を行う最大のメリットが、必ずしも資産を手放さなくてもいいということです。
車や持ち家などの資産を持っている場合は、それらを維持したまま借金を減らすことができます。
ただし、高級車や資産価値の高い家などがある場合は、それらを売却しなくてはいけない可能性もあります。
安定した収入がある
個人再生のデメリットでも説明しましたが、個人再生は自己破産と違って借金が残ります。
ゼロからのやり直しではなく、マイナスからの再スタート。
まずはそれらの返済から始めなくてはいけません。
そのためには毎月一定の収入が必要になりますので、会社員などに向いている債務整理方法です。
借金の理由がギャンブルや浪費の人
個人再生は自己破産や任意整理のできない人のための債務整理方法です。
ギャンブルや浪費は自己破産することが難しいです。
それらの借金を背負っている場合は、個人再生がおすすめです。
借金が200万円以上ある人
個人再生は100万円以下ではメリットがないと紹介しました。
しかし、100万円以上の借金があっても個人再生に向いていないケースがあります。
個人再生には弁護士費用などが発生するため、50〜70万円くらいの費用が発生します。
例えば、150万円の借金があり、個人再生によって借金の返済額が100万円になったとします。
そこに個人再生費用として70万円が発生した場合、総支払額が170万円になります。
これは明らかに損をしていることがわかると思います。
個人再生を行うときは200万円以上をひとつの目安としましょう。
まとめ 借金を大幅に減らし資産を残せる債務整理方法
個人再生とは任意整理できなかった人、自己破産できない人のための債務整理方法です。
借金を大幅に減らすことができ、資産を売却せずに借金を減らすことが可能です。
ただし、資産額が大きい場合には、個人再生でも資産を守れないケースもあります。
住宅ローンがあるケースなどで申請方法が違うなど、素人にはわかりにくい債務整理です。
個人再生を行うときはできるだけ弁護士に相談して進めるようにしましょう。