長い人生、いつ突然の病気や怪我で入院してしまう事態に見舞われるかわかりません。
それは何も、自分自身のことだけではありません。
両親や兄弟など、家族が入院しなければならない場合、誰かがその高額な医療費を支払わなければならないのです。
入院時には公的な制度も利用することができますが、いずれも即金で給付されるものではありません。
ですから、即日で利用できる消費者金融などのカードローンに頼ってしまいがちですよね。
ところが思った以上に入院生活が長引き、仕事復帰もできない、借金返済もままならない…。
そういった場合はどうすればよいのでしょうか?

入院に際して利用できる公的制度は少なくありません。
しかしいずれも給付や貸付までに長い時間がかかります。
患者自身が申し込んで退院時に利用する、というのはあまり現実的ではありません。
医療費の補填のために即日融資可能なカードローンに頼ってしまいます。
その後の収入も途絶えてしまいがちなことから、安易な借り入れは多重債務への入口となる可能性もあります。
こうした事態を防ぐため、早い段階で利用できる制度を知り、申し込んでおくこと。
あるいは借金が返済できなくなった時のことを考え、債務整理なども検討しておくとよいでしょう。
詳細は本文を参考にしてください。
入院費、医療費を借りてしまったら?
ある日突然の入院。
ベッドの上で考えることは自分の容態はもちろん、入院費をはじめとしたお金のことではないでしょうか。
救急車で運ばれて緊急手術ともなれば、退院時に請求される医療費について不安に感じてしまうますよね。
医療費に関しては、健康保険をはじめ高額医療費制度など、様々な制度が用意されています。
症状や程度に応じて一定の費用が給付される、もしくは無利子で貸付を受けることが可能です。
しかしいずれも給付には2~3週間、あるいは1か月以上時間のかかるものもあります。
またそのすべてに限度額があるため、どうしてもある程度の経済的負担は避けられません。
医療費の借金が借金地獄の入口になることも
医療費を借金で支払ってしまうと、当然その後に返済が発生します。
突然の入院、病み上がりの体では、すぐに仕事に復帰することも困難です。
また入院中の収入も途絶えています。
当面は家族に頼ったり、貯金を切り崩したり、生活費や固定費を工面することでやっとの状態になる場合が多くなるでしょう。
そこに借金の返済まで追加されるとなれば、「今月だけは他社で借りて返済しよう」という考えが芽生えはじめます。
これが借金地獄、ひいては多重債務のはじまりです。
生活費を借金で支払うようになると危険信号
借金による医療費の返済のほか、それまで収入で補っていた生活費や固定費まで「お金を借りて支払う」ようになっていきます。
お金を借り、懐に余裕があること自体に慣れてしまいます。
キャッシング枠を自分のお金のように考えてしまうんですよね。
限度額いっぱいまでは穏やかに、何不自由なく過ごすことができます。
お金を引き出せなくなってやっと「これは借金なんだ」と気が付くことができます。
しかしそのころには数百万円もの負債を抱えた状態になっていることは想像に難くありません。
借りたお金を返済できないままでいると…
銀行や消費者金融系カードローンからお金を借り入れ、返済を滞納してしまうと以下のような段取りを踏みます。
最終的には法的措置を取られることになります。
1 | 返済期日を1日でも超えたら電話で連絡 |
2 | 次の返済期日に間に合わなくても連絡、催促状や請求書の送付 |
3 | 1か月~2か月以上滞納で督促状の送付 |
4 | 個人信用情報機関に滞納したという情報が残る |
5 | 内容証明郵便の送付 |
6 | 訴訟を起こされ強制的に敗訴、差し押さえなど強制措置が行われる |
返済期日に1日でも遅れれば、借り入れ先の金融機関から電話による連絡があります。
恐ろしい取り立てを想定する方も多いかもしれません。
この段階では「いつまでに返済できそうですか?」「利息のみの支払いも可能です」など、オペレーターは適切な対処法を教えてくれます。
予想より長く入院していて収入がない場合には、この段階でその旨を伝えてどうすればよいか尋ねたほうがよいでしょう。
絶対に音信不通にはならないで!
早い段階で長期入院が見込まれた場合には、分かった段階で貸金業者に連絡してください。
催促や督促が怖いからといって電話に出ない、応答しない…。
すると業者側もそれに応じた対応を取らざるを得なくなります。
特に内容証明郵便が送付されてきた場合は要注意。
これは「あなたが一切返済していない」ということを証明する郵便物です。
相手方はそれを裁判を起こした際の証拠品として利用しようとしています。
裁判になれば当然返済を滞納しているこちらが敗訴となります。
差し押さえによって自動車や自宅などの財産が換価されてしまうおそれがあるのです。
医療費で借りたお金が返せないときの対応策
それでは、医療費として借りたお金が返せないときにはどのような解決策があるのでしょうか。
- 高額療養費制度を利用して負担を減らす
- 高額医療費貸付制度を利用して融資を受ける
- 専門の相談所に相談する
高額療養費制度を利用して負担を減らす
高額療養費制度とは…。
ひと月に病院や薬局で支払った金額がその人の医療費の上限を超えているとき、後日超過分を払い戻してくれるという制度です。
公的医療保険をはじめ、国民健康保険に加入している人であれば利用可能です。
ただし、申請しなければ払い戻しを受けることはできません。
また受け取り方によっては、払い戻しが3か月以上先になることもあります。
この場合、一時的に費用を立て替えて支払う必要がありますので注意してください。
事前に申請した「限度額適用認定証」を医療機関の窓口で提示すれば、自己負担限度額までの支払いとなります。
参考:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3020/r151
高額医療費貸付制度を利用して融資を受ける
上記の高額療養費制度を利用しても払い戻しは3ヶ月先です。
退院後の生活を考えても、借金をしている場合を考えても、経済的な負担は計り知れないものになります。
そこで、高額療養費支給見込み額の8割を無利子で貸し付けてもらえる「高額医療費貸付制度」が利用できます。
こちらも現在加入している健康保険まで申請を行えば、申請から2~3週間程度で指定の口座に貸付金が振り込まれるシステムです。
全額返済とはなりませんが、早めに申請しておけば経済的負担が軽減されるでしょう。
またこちらは「貸付金」ですが、返済は「高額療養費給付金」から充てられることになります。
参考:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/osaka/cat080/kashitsuke/kasitukekouryou
専門の相談所に相談する
上記の制度の申し込みが遅れてしまったり、利用できず借金返済ができない場合。
そんな時は、債務整理を専門にしている弁護士事務所などに相談してください。
弁護士に債務整理を依頼することで、借金が減額されたり、自己破産などの法的な手続きを行うことができます。
「医療費で自己破産なんて」と思われるかもしれません。
しかし、ご紹介したように借金のきっかけは些細なものでも、様々な理由から雪だるま式に増えていくものです。
ネガティブなイメージが付きまとう自己破産という言葉。
実際には借金で困窮する人々のセーフティーネットとして、多くの人に利用されている制度なのです。
選ぶべき債務整理の方法は?
債務整理には裁判所を通して行う自己破産や個人再生。
自分で手続きをこなす特定調停。
また、弁護士が債権者と交渉する任意整理など、様々な制度が設けられています。
まずは現在の負債額と返済期間、毎月の返済額や契約書面などを把握して、専門家に相談してください。
負債が多く、3年以内に完済が難しいようであれば自己破産を勧められることになります。
今後安定した収入が見込めるようであれば、借金を減額したうえで返済計画を立てる個人再生や任意整理などが望ましいと言えます。
特定調停に関しては費用さえ安く済みます。
しかし、平日に裁判所に何度も通う必要があるなど社会人にはかなり困難な手続きです。
いずれの方法を取るにしても、よく弁護士と相談したうえで決定してください。
まとめ:命にはかえられない。返せない時は早期相談を
債権者としては、借りた理由がどんなものであっても催促、取り立てを行ってお金を回収しなければなりません。
どれだけ返済が困難な理由を説明しても、「じゃあ払わなくても結構ですよ」とはならないのです。
それでも命にはかえられませんから、医療費をお金を借りて支払う、という手段が悪いわけではありません。
とにかく、いざという時に利用できる公的制度を知っておくこと。
もし借金が返済できなくなったときはどうすればいいのか知っておくだけでも、不安な入院生活を乗り越えていける足掛かりとなるのではないでしょうか。